東京高裁令和5年1月17日決定・家庭の法と裁判50号60頁
間接強制決定及び同申立一部却下決定に対する執行抗告事件
X(父):原審債権者、相手方
Y(母):原審債務者、抗告人
【事案の概要】
平成23年6月 | XとY、婚姻(婚姻中、長女と二女が出生) |
平成29年1月 | XとY、離婚(長女と二女の親権者はYと定める) |
平成30年7月 | 面会交流につき、東京高等裁判所が審判に代わる決定(以下「平成30年決定」) ※平成30年決定の主文第2項が引用する面会交流実施要領(以下「本件実施要領」)第1項は、面会交流の日時につき毎月第1日曜日及び第3日曜日と定めた上、Y又は未成年者らの都合により、Xが上記の予定日に未成年者らとの面会交流を実施できない場合には、各予定日の翌週日曜日の同時間に実施する旨を定めている。 |
令和元年 | X、新たに面会交流の時期、方法等について調停申立て |
令和3年6月 | X、平成30年決定に基づき本件間接強制申立て |
令和4年4月 | 本件原審、Yは不履行1回につき3万円を支払えとの決定 |
令和4年9月16日 | 面会交流につき、東京高等裁判所は、本件実施要領第1項及び第2項のうち、当該決定が確定した日以降の面会その他の交流に関する部分を変更するとの決定(以下「令和4年決定」)をし、確定 |
令和5年1月17日 | 東京高等裁判所、本件決定 |
【争点】
- ① 平成30年決定に基づいてされた面会交流の実施を求める本件間接強制申立てについて、平成30年決定が定めていた面会交流の条件がその後になされた令和4年決定により変更された場合、令和4年決定が確定した日以降の面会交流の実施等を求める部分の適法性
- ② 本件間接強制申立てが権利濫用になるか
【裁判所の判断】
- ① 「平成30年決定が命じていた相手方と未成年者らとの面会交流の実施等のうち令和4年9月16日以降の実施等に係る部分については、令和4年決定の確定により失効したことが明らかである。そうすると、抗告人は、もはや平成30年決定の上記部分を債務名義とする強制執行(間接強制)を求めることはできないというべきであるから、本件申立てのうち、令和4年9月16日以降の面会交流の実施等を求める部分については、不適法である。」
- ② 「令和3年1月から6月までの間、予定日に実施されなかった面会交流は15回中11回に及ぶところ、未成年者らの病気や体調不良を直接の理由とするものは、抗告人の説明によっても同年2月14日(ただし、体調不良は二女のみ)及び同月28日(ただし、体調不良は長女のみで、花粉症というもの。なお、いずれも同月7日の不実施の代替日とされた日である。)だけであって(乙4)、不実施とされた理由のほとんどは、未成年者らの習い事、抗告人の多忙、未成年者の意向などというものにすぎず、抗告人において、やむを得ない事情により急遽予定を変更する必要が生じたものとは認められない。そうすると、抗告人の主張はその前提を欠くものであって、相手方が、抗告人に対し、強制金の心理的強制の下に、平成30年決定に基づく面会交流の実施を求めることが過酷な執行に当たるとはいえず、本件申立てが権利の濫用に当たるとは認められない。」
【コメント】
面会交流審判等(前件審判等)がなされた後、前件審判等を変更する面会交流審判等(後件審判等)がなされて確定した場合、前件審判等を債務名義として面会交流の実施等を求める間接強制申立てのうち、後件審判等の確定日以降のものの帰趨については、これまで裁判例がなかったと思われる。本件は事例判断であるものの実務上参考になる。