面会交流を認める審判に基づき間接強制が認められたが、これを不服として執行抗告がされた事案で、間接強制の申立てが権利の濫用には該当しないとされた例

〔事案の概要〕
抗告人(母)は相手方(父)と婚姻し、未成年者(平成27年生)をもうけたが、令和元年に別居し、未成年者は抗告人と生活している。令和2年、相手方は抗告人に対し、未成年者との面会交流を求める審判を申立てたところ、裁判所は、①抗告人は相手方に対し、土曜日の午後4時から翌日曜日の午後4時までの宿泊を伴う面会交流と、日曜日午前9時から午後4時までの日帰りの面会交流を交互に行うこと、②面会交流の開始時刻までに抗告人が未成年者を相手方肩書住所地に送り届け、終了時刻までに相手方が抗告人肩書住所地に送り届けること、③年末年始、4月から5月にかけての大型連休及び未成年者の夏期休暇中に、いずれも2泊3日程度の宿泊を伴う面会交流を行う旨の審判をし(以下「本件審判」という。)、抗告人は即時抗告したが棄却され、本件審判は確定した。
 その後、相手方は、抗告人が本件審判どおりに面会交流を実施しないとして、家庭裁判所に対し、本件審判に基づき、抗告人が本件審判どおりに相手方を未成年者と面会交流させなければならないことを命じるとともに、抗告人が本件審判に基づく義務を履行しないときは、抗告人は相手方に対し、宿泊を伴う面会交流日の場合は不履行1回につき10万円、日帰りの面会交流日の場合は不履行1回につき5万円を支払うことを命じる旨の間接強制の申立てをした(以下「本件間接強制の申立て」という。)。
 これに対し、抗告人は、面会交流を実施できないのは、未成年者が相手方に対して恐怖心を持ったことによるものであり、相手方が間接強制を求めることは権利の濫用であると主張した。
 同裁判所は、本件間接強制の申立てが権利の濫用となるものではないと判断した。これを不服として、抗告人が高等裁判所に執行抗告をした。
〔東京高等裁判所2024(令6)年7月19日決定 家庭の法と裁判57号58頁〕

〔決定の概要〕
そもそも、子が非監護親との面会交流を拒絶する意思を示していることは、面会交流を定める審判に基づく間接強制決定をすることを妨げる理由とはならないのが原則であるところ、本件において、未成年者が面会交流に消極的な意向を示すようになるまで長期間にわたり円滑に面会交流が継続されていたこと、面会交流をしたくないという長女の陳述が真意に基づくものかについてなお検討の余地が残されている状況にあるとの指摘がなされていることなどに照らせば、現状において長女が相手方との面会交流を拒絶する態度をとっているとの一事をもって、直ちに相手方の間接強制の申立てが過酷執行として権利濫用に当たり許されないと認めることは困難である。長女の成長に伴い、本件審判がされた当時からその心情や生活状況に変化が生じていることは事実であるとしても、それらの事情は、現在係属している抗告人及び相手方間の面会交流調停事件における調査等を経て適切に定められる面会交流の内容に反映させるのが相当であり、本件審判に基づく民事執行手続きの一過程である間接強制決定の可否・内容に影響を及ぼすものではないというべきである。
 したがって、抗告人の上記主張は採用することができない。
 以上によれば、原審のとおり、抗告人に対し、相手方と未成年者と面会交流させなければならないことを命ずるとともに、抗告人が本件審判に基づく義務を履行しないときは、抗告人は相手方に対し、宿泊を伴う面会交流1回の不履行につき2万円、日帰りの面会交流1回の不履行につき1万円を支払うよう命ずる間接強制決定をするのが相当である。
 他方、年末年始等の面会交流については、面会交流の長さについて「2泊3日程度」と定めていることから、債務者がすべき給付の特定が十分になされているとはいえず、当事者間の任意の履行に期待した定めと解するべきであり、これについて間接強制決定をすることは相当でない。