妻が夫に対して子の監護者の指定及び子の引渡しを求めた事案において、原審が各申立てを認容したのに対し、抗告審が原審判を取り消し、子の監護者を夫と指定し、子の引渡しの申立てを却下した事例
[札幌高裁2022(令和4)年3月25日決定 家庭の法と裁判58号87頁]

[事実の概要]
X(夫・未成年者の父)とY(妻・未成年者の母)は、2017(平成29)年に未成年者をもうけ、その後3人で生活してきた。Yは翌年から稼働し、毎週木曜日から翌週月曜日までは未成年者とともにYの実家で生活し、火曜日と水曜日のみ未成年者を連れてX方で生活するようになった。
XとYは、2020(令和2)年4月に未成年者を保育園に入園させた後、再びX方で3人での生活を開始した。
Yは、同年12月頃までに不貞に及ぶようになり外泊が増え、同月下旬頃Xに離婚の意思を告げた。Xは、Yの不貞の事実を知り、翌年1月にYとの間で離婚に関する話し合いをし、その後YはYの実家に泊まったが、XはYに告げることなく未成年者を連れてXの実家で生活するようになった。
Yは、釧路家庭裁判所北見支部に子の監護者の指定及び子の引渡しを求める審判を申し立てた。同支部は、「未成年者が未だ4歳と幼年であり主たる監護者とのつながりがその発育にとって特に重要であると考えられること、申立人の監護者としての適格性や監護態勢に大きな問題までは見られないこと、未成年者の年齢を考慮すると環境の変化に対する適応性も有していると考えられる上、過去に申立人父母宅で長期間生活していたことがあり現状と生活環境を変化させることの悪影響が過大であるとまではいえないとの見方ができること」を理由に、未成年者の監護者を母であるYと定め、Xに対し、未成年者のYへの引渡しを命じる審判をした。
Xは抗告した。

[決定の概要]
<主文>
 1 原審判を取り消す。
 2 未成年者の監護者をXと定める。
 3 Yのその余の申立てを却下する。

<理由>
XとYはいずれも未成年者と良好な関係にあるといえるが、未成年者が現在Xの下で安定した生活を送っているのに対し、Yの予定する監護態勢には懸念すべき事情があるといわざるを得ないこと、未成年者とYとの間で現在、月2回程度の面会交流が実施されており、宿泊を伴う面会交流も実施されていることを踏まえると、現時点では、全体としてはYのほうが未成年者の監護養育に関わった時間が長い点を考慮に入れたとしても、現在の監護環境を継続しつつ、未成年者とYとの間における充実した内容の面会交流を継続して実施していくことが、未成年者の福祉に適うものということができる。

<ひとこと>
子の監護者指定・引渡し請求について、原審と抗告審とで結論が分かれた事案である。今後の実務の参考になると思われる。