有責配偶者である夫から妻に対する離婚請求につき、別居期間中夫婦が完全な別居状態あるいは夫婦関係が断絶した状態にあったわけではない等として、夫の離婚請求は信義誠実の原則に反し許されないとした事例
[大阪高裁2022(令和4)年8月24日判決 家庭の法と裁判61号73頁]
[事実の概要]
夫である控訴人(原審原告)は、妻である被控訴人(原審被告)に対し、婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5項)があるとして、離婚を求めた。
原審(大阪家裁令和4年2月9日判決)は、「原告はFと不貞行為を行っており、有責配偶者であることは明らかである。」、「原告と被告の別居期間は…約7年程度と認めるのが相当であるところ、原告と被告の同居期間が約28年に及んでいること、別居の経緯において被告側に責められるべき明確な事情が認められないこと…等を考慮すると、同居期間に対して別居期間が相当長期に及んでいると認めることはできない。加えて原告が現在においてもFとの関係を継続していることも考慮すると、原告と被告の子らがいずれも成人していること、原告が被告に対する十分な経済的な手当を申し出ていること…等を考慮しても、現時点においては、原告の離婚請求は有責配偶者からの離婚請求として信義則に反し許されないものというべきである。」と判示した。
これに対し、控訴人が控訴を提起した。
[判決の概要]
控訴棄却
「本件において控訴人と被控訴人の別居期間は形式的には約7年半~8年2月となっている。しかし…控訴人は、本件自宅を出た後も、三男と夕食を共にするために、被控訴人がいないときとはいえ、本件自宅を週2回程訪れていたものである。また控訴人と被控訴人は、三男のことや控訴人の母親のことで連絡を取り合ったり、長男の家族との会食に一緒に参加したり、二男の結婚(両家の顔合わせ)の際に一緒にあいさつしたり、控訴人の母親の法要等に一緒に参加したりするなど、夫婦としての行動・対応も一定程度していたものである。そうすると前記の期間、控訴人と被控訴人が完全な別居状態あるいは夫婦関係が断絶した状態にあったということはできない。」
「控訴人と被控訴人との間の婚姻関係は、その同居期間は27~28年あり、その後控訴人主張の別居期間を経て、現時点では破綻していると認められることは前記のとおりである。しかし、当該別居期間中においても控訴人と被控訴人が完全な別居状態あるいは夫婦関係が断絶した状態にあったわけではない。また、この間、被控訴人はFとの関係を継続していることに苦しみつつ、家族関係を維持し、未成年であった三男Eを育て上げたのであり、被控訴人は現時点でも、なお、控訴人が不倫を解消すれば、婚姻関係は修復可能であると供述している。それにもかかわらず、婚姻関係の破綻が認められるのは、控訴人において不貞関係を解消する意思がなく、離婚の意思が強固だからである。これらの点に鑑みると、控訴人主張の別居期間による時間の経過によっても、控訴人の有責行為に対する社会的意味ないし評価が希薄化したとか、新たに保護すべき必要性の高い生活関係が形成されたなどということはできない。…そして、このように控訴人の離婚請求が、有責配偶者からの離婚請求として信義則に反し許されないものである以上、形骸化した婚姻関係が形式的に残存することになることはやむを得ない。」
[コメント]
別居後における当事者間の交流の状況等を具体的に認定した上で、別居が相当の長期間に及んだかどうかについて判断した事例として、今後の実務の参考になる。
