相続財産である土地につき、地方公共団体(市)が特別縁故者と認められて分与された事例

【水戸家審2022(令4)年7月13日 家庭の法と裁判44号57頁】

【事実の概要】
 被相続人Aは平成25年に死亡し相続が開始したが、唯一の法定相続人である被相続人の夫Bが相続を放棄したため、法定相続人が存在しないこととなった。そこで地方公共団体(市)の申立てにより相続財産管理人が選任され、相続人捜索の公告がされたがその権利を主張する者はいなかった。そこで地方公共団体(市)が申立人となり、特別縁故者(改正前民法958条の3第1項、現民法958条の2第1項)に該当すると主張して相続財産である本件各土地につき財産分与を申し立てた。

【審判の概要】
 本件各土地は、Aがその母親Cから相続により取得した土地であったが、従前から市道の敷地、小学校の通学路又は蛍の育成等による市民の憩いの場として、いずれも無償で使用することが認められてきており、その管理は市及び地元自治会に委ねられてきていた。
 また、上記Cは、生前、地元の小学校の教員を長年務め、地域発展に対する思いが強く、その郷土愛に基づき本件各土地の上記使用を認め管理を市や地元自治会に委ねてきたものであり、Aも亡Cの想いを受け継いで本件各土地の管理を市や地元自治会に委ねてきたものである。
 被相続人は、亡Cの意向を受け継ぎ、本件各土地を長年にわたり地元の公共財産としてその用に供してきており、将来的にも現状が維持されることを望んでいたと認められる。そうすると、申立人は、被相続人の相続財産である本件各土地の維持・管理を通じて、生前、被相続人と密接な交流があり、本件各土地を申立人に分与することが被相続人の意思にも合致するというべきであって、申立人は、「その他被相続人と特別の縁故があった者」(改正前民法958条の3第1項、現民法958条の2第1項)に該当すると認められる。

【ひとこと】
 地方公共団体を特別縁故者と認めた事例である。