A 最近、「民法改正」とか、「共同親権」という言葉をよく聞きますね。

B そうですね。報道でご存じかもしれませんが、2024年5月17日に、「民法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第33号)が成立したのです(公布は5月24日。以下、「改正法」といいます。)。

今回の改正は、大きくは、家族に関する法制度を見直すものとなっていて、公布から2年以内に施行されることが決定しています。

A 施行も、もうすぐですね!でも、なぜ法改正されることになったのでしょう?

B 法務省によると、父母の離婚が子の養育に与える重大な影響や、子の養育の在り方の多様化、 現状では養育費・親子交流は取決め率も履行率も低調であるという現状等が背景にあったようです。

A 離婚後の「共同親権」も、この改正で導入されたのですね?

B そうです。

従来の民法では、父母の婚姻中は共同親権ですが、離婚すると一方だけが親権者(単独親権)とされてきました。この点について、子の利益を確保するためには、父母双方が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが望ましいことから、その見直しが必要であるとの指摘がされていました(法務省)。そこで、国際的な動向も鑑みて、今回の法改正により、離婚後の共同親権を可能とする規定が置かれることになりました。

A 改正されたのは、親権の点だけですか?

B いいえ、養育費や親子交流、養子縁組、財産分与など関する規定も見直されたのです。詳しくは、次回以降のコラムで説明しますね。

あと、改正法で注目すべきは、親の責務等に関する規定が新設されたことでしょう。

A どうして新設されたのですか?

B 従来の民法では、親の責務の規定が明確ではなく、親権者でない者が子に責任を負わなくてよいといった誤解を招きかねませんでした。また、父母は子の扶養義務を負うとされていますが、その扶養義務の程度についての規定がないという問題もありました。

そこで、改正法は、

「父母は、子の心身の健全な発達を図るため、その子の人格を尊重するとともに、その子の年齢及び発達の程度に配慮してその子を養育しなければならず、かつ、その子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならない。」(817条の12第1項)

と定めたのです。

A なるほど。他にもありますか?

B 従来の民法では、「夫婦は(中略)、互いに協力し扶助しなければならない」(752条)という規定があるだけで、婚姻関係がない父母の関係については規定がありませんでした。

そこで、改正法は、

「父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならない」(817条の12第1項)

と規定しました。

では、次回は、親権の改正についてもう少し詳しく見ていきましょう。