離婚判決(確定済み)において、清算的財産分与が定められている場合に、同判決において考慮されていない夫婦の共有財産があることを理由に、重ねて清算的財産分与を求めることはできないとした事案

〔事案の概要〕
A(抗告人・原審申立人・夫)とB(相手方・原審相手方・妻)は、離婚判決(前件判決)の確定により離婚をしたが、AはBに対し、前件判決における財産分与の判断の対象とされなかったBが保有する有限会社の出資口数等について重ねて財産分与を求める調停の申し立てをしたが、その後、審判に移行した。
原審は、前件判決において清算的財産分与が定められているから、本件申し立ての対象とした財産について、重ねて財産分与を求めることは認められないとしてAの申立てを却下した。Aはこれを不服として即時抗告をした。
本件抗告審は、Aの抗告を棄却し、Aの財産分与の申立てを却下した原審判を維持した。
〔東京高等裁判所2022(令4)年3月11日決定 家庭の法と裁判50号69頁〕

〔判決の概要〕
「財産分与に関する民法の規定及び判例法理等に照らすと、財産分与請求権は、当事者双方がその協力によって得た一切の財産の清算を含む1個の抽象的請求権として発生するもので、清算的財産分与の対象となる個々の財産について認められる権利ではないのであるから、裁判所がその協議に代わる処分の請求に基づいて、財産分与の額及び方法を定める内容の判決等が確定したときは、その効力として、当事者双方がその協力によって得た財産全部の清算をするものとして具体的内容が形成されるものである。したがって、上記判決等が有効に確定したものである限り、当事者は、上記判決等において考慮されていない財産があることを理由に、当該財産について、重ねて清算的財産分与を求めることはできないものと解するのが相当である。
そうすると、上記に説示した財産分与請求権の法的性質及び非訟事件手続法に基づいてされる財産分与に関する裁判所の定める協議に代わる処分の性質・内容に照らし、前件判決は、本件申立理由とされた財産についても、財産分与の対象財産の有無及び内容において審理し、『当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して』財産分与の額及び方法を定めたものであって、たとえ当事者が、前件判決において本件申立て理由に係る財産が財産分与の対象となる旨の認識を有しておらず、あるいは同財産の存在について何らの主張立証をしていなかったとしても、これらの財産について重ねて財産分与の申立てをすることはできないといわざるを得ない。」