別居親である父が同居親である母に対し未成年者の監護者指定及び引渡しを求めた事案で、原審は母を監護者と指定し、未成年者の引渡しを認めなかったのに対し、抗告審は、同居中に未成年者を主として監護していた者が母であったと認めながらも、母の現在の監護態勢に相当な問題があるなどとして原審を取り消し、父を監護者と指定し、未成年者の引渡しの申立てを認容した事例
【東京高裁令和3年11月5日決定 家庭の法と裁判60号171頁】

【事案の概要】 X:父/別居親/原審申立人(抗告人) Y:母/同居親/相手方

平成28(2016)年
XY婚姻
平成29(2017)年
XY間に未成年者(Z)誕生
令和元(2019)年12月末
YがZを連れてXと別居
令和2(2020)年2月頃
Yが男性A(婚姻前からYと知人)とA宅で同居開始
同年6月
Yが女性B(婚姻前からYと知人)ともA宅で同居開始
令和3(2021)年1月
Xが別居後初めてYとZと1時間程度面会交流
同年3月
家庭裁判所にてZとX又はYとの交流場面観察調査実施
同年4月
2度、各2時間程度面会交流実施

【原審】東京家裁令和3年6月18日審判

 原審は、Yの監護状況は不安視すべき点もあるもののおおむね安定していること、同居期間中の主たる監護者であったYとの間に強い心理的つながりが形成されていることから、Yと同居する現状の生活環境を維持した上で、Xとの面会交流等を通じてXとの情緒的交流関係を維持していくことが未成年者の利益に適うとし、Yを監護者に指定するのが相当とした。

【抗告審】原審取消、申立て認容で確定

 抗告審は、別居後のYの監護状況について、現在の監護状況自体にZの心身を害する状態があるとは認められないとしつつも、Yの対応は、YがZの生活環境や生活リズムを整えることへの配慮よりも自身の都合や意向、Aとの関係を重視していたことを強くうかがわせるとし、特にAとの頻繁な交流に積極的であるが、別居後1年間もXとZを交流させず、結果的に「パパ」であるXと「お父さん」であるAの存在についてZを混乱させている点において懸念が大きいとした。YとAは、Zの面前でYA間の不貞を疑わせる会話やAが違法薬物を過去に使用したことを想起させる会話をしており、Yの現在の監護が未成年者への配慮に欠けるAの補助を受けながらの監護であり、YがAの強い影響下で生活していることが伺われることも考慮して、Yの現在の監護態勢に相当な問題があると判断した。またYの監護態勢は監護補助者であるA及びBとの関係の安定性や継続性に不確実な部分が大きく、Xの監護態勢の方が、経済的にも安定しており、近隣に住む両親の補助が期待でき、相当に安定性が高いとした。そして、XとZは、安定した関係が築かれており、監護環境を変えたとしても、Zが環境に順応できるようXは対応できるとし、Xを監護者とするのが相当とした。