父母以外の第三者で事実上子を監護してきた者(X)には、子の監護をすべき者を定める審判の申立権はないとして申立てを認容した原審高裁決定を取り消し、この申立てを却下した事例

【最高裁第一小法廷決定(破棄自判)2021(令和3)年3月29日民集75巻3号952頁 家庭の法と裁判41号32頁】

【事実の概要】
 抗告人Y1と前夫は、平成21年に子(本件子)をもうけたが、平成22年、親権者を抗告人Y1と定めて離婚した。
 抗告人Y1及び本件子は、平成21年12月抗告人Y1の母である相手方(祖母)と相手方宅で同居するようになり、以後抗告人Y1と相手方が本件子を監護していた。
 抗告人Y1は平成29年8月頃、本件子を相手方宅に残したまま相手方宅を出て抗告人Y2と同居するようになり、その後は申立人が本件子を監護している。
 抗告人Y1と同Y2は、平成30年に婚姻し、その際、抗告人Y2は本件子と養子縁組をした。相手方は、抗告人両名に対して家事事件手続法別表第2の3の項所定の子の監護に関する処分として本件子の監護をすべき者を定める審判を申し立てた。

【審判の概要】
 一審は、子の福祉のためには相手方を監護者として指定するのが相当であるとして相手方を監護者として指定した。
 抗告審も、相手方の監護状況に特段の問題はないとして、Y1らの抗告を棄却した。
 許可抗告審である最高裁は、以下の理由で原審高裁決定を取り消し、相手方の申立てを却下した。
 民法766条の適用又は類推適用により父母以外の者の申立権を認めると解することはできず、他にこれを認めるべき法令上の根拠もない。
 したがって、父母以外の第三者は、事実上子を監護してきた者であっても、子の監護に関する処分として子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることはできないと解するのが相当であるから、相手方の本件申立ては不適法である。

【ひとこと】
 なお最高裁第一小法廷は、同日、同一関係者の面会交流申立てに関しても同趣旨の決定をした(集民第265号113頁)
 現在のところ、第三者は、親権停止の申立て(民法第834条の2)をしてそれを本案とする仮の処分として親権者の職務執行停止、職務代行者の選任の保全処分の申立てをし、親権停止の審判の効力が生じた後は未成年後見人の選任を申し立てることができる(民法828条1号、840条1項)など、迂遠であるが必要な対応をとることができるので、解決手段がないわけでない。
 現在、法制審で第三者に監護者指定や面会交流の申立権を認める立法化についての議論がなされている。(法学教室2021年489号168ページ)