先月、当事務所の虎ノ門会議室で、アートの対話鑑賞ワークショップが開催されました。講師は、国立の美術館でガイドスタッフとして活動しておられる清水与志絵さん。当事務所の弁護士6名は、約2時間、皆様より一足早く“芸術の秋”を楽しみました。

さて、体験会の前に、質問タイムです。

Q 清水さんは、いつからアートに関心を持つようになったのですか?

A 祖父が画家で、幼い頃からアート作品に囲まれて育ちました。描くことより見ること、美術鑑賞が好きで、絵の世界観に没入し心の中で自分の好きなように絵と対話することが何よりも楽しみでした。私の名前「与志絵」は、洋画家の祖父が、「絵」の「志」を「与える」として命名してくれたのです。

Q まさに、“名は体を表す”ですね。ところで、「対話鑑賞」とは、どういうものでしょう?

A ファシリテーターが作品の解説を一方的におこなうのではなく、鑑賞者が目の前の作品をよく見て、感じたり考えたりしたことを言葉にし、進行役のファシリテーターを介して対話を交えながら作品を鑑賞するというプログラムです。

1980 年代に NY の近代美術館で始まったVTS(Visual Thinking Strategies:アートを通じて鑑賞者の思考力、言語力、コミュニケーション能力、ビジュアルリテラシー向上などにつながる鑑賞方法)から派生したものです。

Q 清水さんがこのプログラムの存在を知ったのはいつですか?

 20年ほど前です。国立の近代美術館で出会い、「これだ~!」と思いました。ライフワークになるほど夢中になって現在に至ります。

Q なるほど。知識がなくてもアートと触れ合い、楽しむことができますね。さて、清水さんは、国立の美術館で対話鑑賞の活動をされているのですよね?

 はい。2005年から、来館者と作品を結ぶ懸け橋になるべく、ガイドスタッフとして活動を続けてきました。でも、今年度でガイドスタッフは卒業です。

Q 今後は、どうされるのですか?

 個人で活動を続けます。実は、2015 年頃から、各大学で、ゼミや一般教養授業にてアート作品を用いた対話鑑賞ワークショップを実施してきました。また、2023 年から、都内のこども園や幼稚園で、未就学児向け(5歳児)対話鑑賞ワークショップを実施するなどしています。これからも、活動の幅を広げ、

大人から子どもまで様々な方に、アート作品の対話鑑賞プログラムを楽しんでいただきたいと思っています。


いよいよ、お待ちかねのワークショップがスタートです。

まず、裏返したアートカード(https://ncar.artmuseums.go.jp/activity/learning/learningresources/)から各自1枚を取り、そこに描かれた名画や彫刻(写真)にタイトルを付け、その理由を皆に披露します。しっくりくるタイトルを付けるのは予想外に難しく、「発表の番が、少しでも後に来ますように」と幼稚な祈りを捧げます。その一方、同僚弁護士たちの発表は意外感満載で面白く、笑ったり感嘆したりしているうちに、次なるゲーム(名探偵ゲーム)に移ります。

名探偵ゲームは、表を上にして机上に広げられたアートカードから、清水さんが心の中で選んだ1枚のカードを皆で協力し、推理して当てるゲームです。初対面同士でも盛り上がること必至です。

お次は、同じく表を上に広げられたアートカードから、春・夏・秋・冬をイメージするカードを各々選び、自分が部屋に飾りたいカレンダーを作ります。カードには季節を直接表すものは殆どなく、各自、呻吟しながら4枚のカードを選んでいきます(早い者勝ちなので、反射神経も試される)。最終的に完成した6種のカレンダーには、それぞれの個性と季節へのイメージが素敵に統一されていました。

ここでアートカードは箱に戻され、次に清水さんが取り出したのは油絵の肖像画(図版)。清水さんから、「この人をよく見て、私に詳しく紹介してください」と言われ、各自、人物評を始めました。他のメンバーの着眼点や独創的なストーリーに感心しつつ、年齢、性格、職業、性別等、どれをとっても見事にバラバラだったという現実に、人の印象がいかに当てにならないかを思い知ります。その後、清水さんから、モデルとなった人物や構図上の工夫等について説明をしていただき、改めて画を眺めると、あら不思議。この人物が2次元世界の“他人”から、3次元世界の“体温を持った知人”に変わっていることに気付きます。

最後に、抽象画の鑑賞をしました。これまで、抽象画はなんとなく敬遠し、美術館でも素通りするのが常でした…が、これ以上は語りますまい。ぜひ、ご自身で体験してみてください。

清水与志絵さんのアート・ファシリテーターとしての連絡先は、saesaemam@yahoo.co.jpです。

清水さん、これからもたくさんの人に、対話を通してアートと触れ合う喜びを届けてください!応援しています。