療養看護による寄与分の主張につき、要介護認定を受けていない被相続人であってもその病状等に照らして81日間の在宅看護について寄与分を認めた事例
【東京高裁令和5年11月28日決定 家庭の法と裁判57号70頁】
【事案の概要】
被相続人は令和3年3月に入院しその後死亡した。長男(X)が長女(Y)に対し遺産分割の申立をし、Yが寄与分を定める処分の申立を行い、原審(宇都宮家裁大田原支部令和5年3月3日審判)は寄与分の申立を却下し、Yが即時抗告した。
Yは看護師で、平成25年9月から被相続人宅で同居を開始したところ、同居開始当時、被相続人には骨折等の後遺症で左上腕を上げにくいなどの症状があった。平成27年11月に被相続人は要支援1の認定を受けたが、日中は独居できていた。その後、被相続人は平成29年10月に乳がんの手術を受けたり平成30年にも入院するなどしたが、退院後は食事の介助は不要で、トイレまで歩行器で歩行できていた。
令和3年1月頃、被相続人はトイレまで歩行できなくなりポータブルトイレの使用を開始し、ベッドからポータブルトイレまでの移動等にYの介助を要するようになった。被相続人は同年3月に心不全により入院しその後死亡したが、亡くなるまで要介護認定は受けておらず、介護保険サービスは平成27年に1回利用しただけだった。Yは、同居を開始した平成25年9月から死亡まで介護したとして寄与分を主張した。
【高裁の判断】
原審は、Yが「特別の寄与」に該当する療養看護を行ったとは認められないとした。
高裁は、被相続人が令和3年1月頃にはトイレまで歩行できなくなってベッド横に置いたポータブルトイレを利用するようになり、トイレへの移動や下着の上げ下げにもYの介助を要するようになったことなどから、令和3年1月には、被相続人は起居移動につき一人でできないことが多くなり、排泄等の日常生活に介助や介護が必要になった(※要介護2相当の状態)と認定した。そして、被相続人が介護保険サービスを利用していないとしても、看護師の資格及び経験のあるYの介助及び介護を受け続けているとして、令和3年1月1日から同年3月22日に入院するまでの81日間につき、Yが特別の寄与をしたと認めた。
【コメント】
被相続人の療養看護による寄与分(民法904条の2第1項)が認められるには、被相続人との身分関係に基づいて通常期待されるような程度を越える貢献をしたといえなければならない。通常の看護は親族として当然のことだからである(民法730条・752条)。一般に要介護2以上の状態にある被相続人に対する療養看護であれば、特別の寄与に相当するとされる。
高裁は、診療記録等だけでなく、ポータブルトイレの購入時期やYが看護師であったこと(介護サービスを利用しなくても足りてしまったこと)などを合わせ考えて、被相続人が一定の時期から要介護2相当の状態であったと認め、Yの寄与分を認めた。
