離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合に、当事者が分与を求める財産の一部につき財産分与についての裁判をしないことは許されないとした事例
[最高裁第2小法廷2022(令和2)年12月26日判決 家庭の法と裁判45号26頁]

[事実の概要]

妻Xと夫Y間の離婚等請求訴訟において、一審(東京家判令和2年6月1日)は離婚請求を認容するとともに、当事者が分与を求める財産の全部について、財産分与についての判断をした。当事者が分与を求める財産には、XとYが婚姻後に出資して設立した医療法人の持分が含まれていた。
Yは、財産分与等に関する一審の判断に不服があるとして控訴をし、Xは付帯控訴をした。なお、離婚に関する部分については不服申立の対象とされなかった。
控訴審(東京高判令和3年3月16日)は、医療法人がXに対し不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起して現在も係争中であること等に照らせば、Xの医療法人に対する「貢献度を直ちに推し量り、財産分与の割合を定め、その額を定めることを相当としない特段の事情がある」として、「医療法人の出資持分は、離婚に伴う財産分与の対象とすることは相当とは認められない」と判断した。
Xは、出資持分について財産分与の対象としなかった原審の判断は違法であるとして、上告受理申立をした。

[判決の概要]

<主文>
原判決中、財産分与に関する部分を破棄する。
前項の部分につき、本件を東京高等裁判所に差し戻す。
<理由>
「当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の一部につき、裁判所が財産分与についての裁判をしないことは、財産分与の制度や同項(※人事訴訟法32条1項)の趣旨にも沿わないものというべきである」
「離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合において、裁判所が離婚請求を認容する判決をするに当たり、当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の一部につき、財産分与についての裁判をしないことは許されない」
「原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある」