養育費減額審判において、相手方の再婚相手が精神科の開業医であることから、算定表の上限の営業所得があると推認し、かつ、再婚相手の収入を相手方の収入として考慮した例
(宇都宮家裁令和4年5月13日 家庭の法と裁判45巻88頁)

【事案の概要】

≪当事者≫申立人(父):X、相手方(母):Y、相手方再婚相手:Z

平成25年 XとYが婚姻中に長女誕生
平成30年12月 XとYが協議離婚(長女の親権者はY)
Xは、平成31年1月から長女が満22歳に達する日の属する年の3月まで、養育費月額15万円を支払う旨の合意
令和2年12月 YがZと再婚、Zと長女は養子縁組せず
令和3年10月 Xが養育費減額調停申立て⇒審判に移行
Yは、Zについて令和2年の市県民税所得証明書以外提出しない

 

【争点】

  1. 長女を事実上扶養するZが高収入を得ていると推認されることが養育費の合意後の事情変更にあたるか否か
  2. Xが支払うべき養育費額算定にあたりZの収入を考慮すべきか否か
  3. Zの収入をどのように認定するか

【裁判所の判断】

  1. Zは、Yと婚姻後、長女と養子縁組をしていないものの、「これに準ずる状態にあるとするのが相当である」ところ、このような状態は養育費の合意当時に前提とされておらず、合意内容が実情に適合せず相当性を欠くに至ったとして、事情変更を認めた。
  2. Zが、「長女を事実上扶養して事実上養子縁組している状態であること」、「長女への生活費等の給付が十分にされていると考えられること」に鑑み、Zが長女の扶養義務を負うとした場合の子の生活費を参考にした金額を、Yの総収入に加算した。
  3. YがZの令和3年の収入資料(確定申告書等)の提出を拒否すること、Zが精神科の開業医であることを考慮し、算定表の上限金額を得ていると推認した。

以上より、養育費を月額9万円に変更した。