凍結保存精子を用いた生殖補助医療により出生した子らが、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に基づき男性から女性に性別変更の審判を受けた者を父として、認知請求訴訟を提起した事案

【事案の概要】
A(被控訴人・原審被告)の凍結保存精子を用いて、生殖補助医療により出生したB(長女 控訴人・原審原告)及びC(二女 控訴人・原審原告)が、性同一性障害の性別の取扱いの特例に関する法律に基づいて男性から女性に性別の取扱いの変更の審判(以下「本件審判」という。)を受けたAを父として、民法787条により認知請求権を行使した。
原審は、Aが本件審判を受けた以上、たとえB及びCとの間で生物学的な父子関係が認められるとしても、Aを民法787条の父であるとして認知を求めることはできないとし、B及びCの各請求を棄却した。そこで、B及びCが控訴した。
〔東京高等裁判所2022(令4)年8月19日判決 家庭の法と裁判46号73頁〕

【判決の概要】

1 民法787条が規定する「父」とは、精子の形成や射精などの生殖機能を有する男性である「父」をいい、同条にいう「父」の解釈としては、生殖機能を有する生物学的な意味での男性を「父」と規定したものと解される。

2 本件審判が確定する前にAの凍結保存精子を用いた生殖補助医療により出生していたB(長女)については、その出生時において、生物学的な父子関係を有する「父」に対する認知請求権を行使する法的地位を有するとして、Bの請求を認容した。

他方で、本件審判が確定した後にAの凍結保存精子を用いた生殖補助医療により出生したC(二女)については、その出生時において、Aは、民法の規定の適用において法律上の性別が「女性」に変更されていたもので、民法787条の「父」であるとは認められないから、CとAとの間に生物学的な父子関係が認められるとしても、Cが出生時において、同条に基づいてAに対する認知請求権を行使する法的地位を取得したものであるとは認められないとして、Cの請求は棄却した。

【コメント】
本件は上告されましたが、最高裁第2小法廷は、2024年5月31日に当事者の意見を聞く弁論を開くことを決めました。高裁判決が見直される可能性があります。

※ 【追記】2024年6月21日、最高裁第2小法廷は、裁判官4人全員一致の意見として「戸籍上の性別にかかわらず父親としての認知を求めることができる」という判断を示し、AとCとの父子関係を認めました。