A 家族に関する法律では、これまで勉強したほかにどんな改正がなされたのですか?

B まず、財産分与について以下の改正がなされました。

 ① 財産分与の請求期間を、現行法の「離婚の時から2年」から、「離婚の時から5年」 

に伸長しました

 ② 財産分与をすべきかどうか及び分与額についての考慮要素について、現行法では定められていないものを、次のように具体的に列挙しました

・婚姻中に取得し又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度

・婚姻の期間

・婚姻中の生活水準

・婚姻中の協力及び扶助の状況

・各当事者の年齢 、心身の状況 、職業及び収入その他一切の事情

③  婚姻中の財産に対する各当事者の寄与の程度は原則1/2ずつとすることを明文化しました

④ 裁判所が、当事者に対し、必要があると認めるときは、当事者の申立または職権によりその財産の状況に関する情報を開示することを命ずることができるとし、この開示命令に対し正当な理由なく情報を開示せず、又は虚偽の情報を開示したときは、10万円以下の過料に処されることになりました

A 財産分与以外にはどんな改正がありましたか?

B 夫婦間の契約取消権(民法754条)が削除されました。

  現行法は、夫婦間でした契約は原則として婚姻中いつでも夫婦の一方から取り消せる、と定められています。しかし、この取消権が廃止されました。

A なぜ廃止されたのでしょうか?

B この規定に対しては、もともと、当事者の真意を問題にせずに夫婦間なら一律に契約を取り消せるとするのは相当ではない、といった批判がなされていました。また、判例で婚姻が実質的に破綻している場合は同条の適用はないとされており、結局、夫婦関係が円満な状態でしか適用が認められないところ、円満な状態なら無用の規定なので存在意義が失われているとされていました。

A なるほど、例えば、もし夫婦間でも「騙されて契約した」というなら、普通の詐欺取消を主張すればよいですね。

B そうですね。なお、「夫婦の一方が他方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6か月を経過するまで時効が完成しない」という夫婦間の権利の時効完成猶予の規定(民法159条)は、今回の改正でも変更がありませんでした。

 というわけで、例えば、15年前に夫が妻から100万円借りて、今になって返済を要求された場合、消滅時効により支払いを免れることはできません。

A このほかにはどんな改正がありましたか?

B 裁判上の離婚原因のうち、精神病離婚(民法770条1項4号)が削除されました。   現行法は、夫婦の一方が強度の精神病にかかり回復の見込みがないときは、これを原因として離婚請求が可能とされています。しかし、以前からこの規定に対しては精神的な障がいを有する者に対する差別的な規定であるとの批判があり、裁判実務上も、不治の精神病にかかったこと一事をもって離婚の理由があるとは認められていませんでした。

  そこで、改正法は、不治の精神病を独立の離婚原因からは削除しました。

  ただし、精神障がいの状況は、これまでの裁判実務にならい、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)の1つの事情として考慮されるでしょう。