父母以外の第三者は、事実上子を監護してきた者であっても、家庭裁判所に対し、子の監護に関する処分として、当該第三者と子との面会交流について定める審判を申し立てることはできないとした事例
[最高裁決2021(令3)年3月29日 家庭の法と裁判41号43頁]

【事案の概要】
 未成年の子Aの祖父母(子の母親Bの両親)であるX1、X2が、子の父であるYを相手方として、子との面会交流について定める審判を申し立てた。
 平成28年にBはXら宅に里帰りしてAを出産、その後、Y、B及びAはXら宅で生活していたが、Yは、平成29年1月頃、Xら宅を出て別居を開始した。Aは、同年3月以降は1週間交代、のち2週間交代でXら宅とY宅で生活していたが、平成30年Bが膵臓がんで死去し、以後はYがAを監護していた。同年7月、Xらは、Aとの面会交流を求める親族間の紛争調整調停を申し立てたが不成立となり、上記申立てに至った。

【原審】
 父母以外の第三者でも、子との間に父母と同視し得るような親密な実質的関係を有し、その者との面会交流を認めることが子の利益に適うと考えられる場合は、民法766条1項、2項を類推適用して、その者と子との面会交流を認める余地があるとした。

【決定の概要】
 決定:破棄自判
父母以外の第三者は、事実上子を監護してきた者であっても、家庭裁判所に対し、家事事件手続法別表第2の3の項所定の子の監護に関する処分として上記第三者と子との面会交流について定める審判を申し立てることはできない。

(理由)
民法766条2項は、同条1項の協議の主体である法律上の父母の申立てにより、家庭裁判所が面会交流その他の子の監護に関する事項を定めることを予定しているものと解されること、また、民法その他の法令で事実上子を監護してきた第三者が家庭裁判所に上記事項を定めるよう申し立てることができる旨を定めた規定がないこと、監護の事実をもって第三者を父母と同視することもできないことから、民法766条等の直接適用または類推適用を否定。

【メモ】
父母以外の第三者で事実上子を監護してきた者が子との面会交流について定める審判を申し立てることができるか否かという問題について最高裁が初めて判断を示したもの。
現行法では、第三者は面会交流が子の利益に適うことを主張し親族間の紛争調整調停(家事手続法244条)で子の父母との合意を目指すべきことになる。