婚姻費用分担金につき、義務者である夫(開業医)の収入が標準算定方式の上限を大幅に超えていたため、同人の総収入から控除する税金や社会保険料、職業費及び特別経費について、事業収入の特殊性を踏まえた数値を用い、更に一定の貯蓄分を控除して婚姻費用分担額を算定した事例

【大阪高決2022(令4)年2月24日 家庭の法と裁判43号69頁】

【事実の概要】
婚姻費用の算定を巡り、別居中の夫(開業医)の年収が7481万1253円(抗告審の認定。原審では5979万7540円と認定)と高額で、令和元年度作成の改訂標準算定方式の自営年収の上限1567万円を大幅に超えていたため、婚姻費用分担額をどのように算定するかが問題となった。原審(大阪家審2021(令3)年6月22日)は、同居時の生活水準、生活費支出状況及び別居後の申立人(妻)の家計収支及び生活状況等など諸般の事情を踏まえて婚姻費用の分担額を検討し、相手方(夫)の婚姻費用分担月額を85万円とした。これを不服として、双方が即時抗告した。

【決定の概要】
抗告審は、前記のとおり、夫の年収を原審よりも高額に認定した上、婚姻費用の額を算定するに当たっては、令和元年度作成の改定標準算定方式によるのが相当であるとして、「夫婦分に相当する基礎収入を算定し、これを生活費指数で按分するという本件算定方式を維持した上で、高額所得者である原審相手方(夫)においては総収入から控除する税金や社会保険料、職業費及び特別経費について、原審相手方(夫)における事業収入の特殊性を踏まえた数値を用い、さらに一定の貯蓄分を控除して、同人の基礎収入を修正計算するのが相当である。」と判示し、夫の基礎収入を計算し、かつ、夫が原審申立人(妻)を母としない認知子2名に支払っている養育費を控除して、1958万6956円を夫の修正基礎収入と認定した。また、同居中の世帯支出の状況や現在の妻世帯の支出状況など諸事情をかんがみると夫の上記修正基礎収入を減額修正する必要はないとして、夫の婚姻費用分担月額を125万円に変更した。