兎は、きっと明日にでも雷に打たれ、あたら短い(短くない)生涯を終えるであろう、と慄き、震えていました。

今月(10月)7日、厳島神社の能舞台を前にして…

兎はかねてから、生涯に一度は厳島神社で観月能を観たいと願っていました。とはいえ、観月能は席数も限られ、チケットはプラチナ化していると聞く。

ちなみに、兎が広島県に住んでいた幼少の頃には、観月能なるオシャレなものはなく、兎にとっては、厳島神社=鹿+潮干狩り。大鳥居の近くで貝を掘っていましたよ。

観月能は、人間国宝であらせられる喜多流・友枝昭世師が、30年前に厳島神社で始められたもので、今年が28回目だといいます。

さて、兎がなぜ、この場に来られることとなったのか。
話は今年の8月に遡ります。

兎の知人に、人生を楽しむ達人(素敵な先輩)がいるのですが、この方、大変お顔が広い。「薮内佐斗司さんに会いたい!」と騒ぐ兎のために、お食事会を企画してくださいました。

この日、薮内さんの向かいの席でハイテンションとなっていた兎。その隣にひっそりとカッコよく座っておられたのが、友枝昭世師の門下の方でした。

そして、この方のお計らいで、兎はなんと、観月能のチケットをいただくことになってしまったのです。しかも、能舞台の真正面、最前列という罰当たりな席を…

演目は「清経」。

源氏に追われ、絶望の末に海に身を投げた平清経。その亡霊が、平家ゆかりの厳島神社に登場するとは…
実は、これまで厳島神社では演じることができなかったそうで、今回が初上演なのだとか。

友枝昭世師が演じる清経が、笛の音に合わせて橋掛りを進みます。笛が止まると清経も止まる。笛が鳴ると、また動き始める。これは「音取」という、とても珍しいものだそうです。

そして、友枝昭世師の一つ一つの所作、その佇まいに、兎は、ただただ胸がいっぱいになってしまいました。

観客席は真っ暗。能舞台と大鳥居だけが闇に浮かび上がります。
海を吹き渡る風。音を立てて満ちていく潮。
兎は、幽玄の世界を深~く味わいました。もう現世に戻れないかも。

さて、話は変わりますが、兎は観月能の前に、厳島神社の背後にそびえる弥山に登りました。
ロープウェーを乗り継いで途中まで行くのですが、そこから頂上までが意外と長い。10分ほどぐんぐん下ると、今度は急な上り道が続きます。

この日の兎は、パソコンに専門書、衣類などを詰め込んだ巨大バッグを担いでいました。ロープウェーを降りた途端、「しまった!」と叫ぶ兎。
数年前に来たときはそんなに大変ではなかったから大丈夫、と気を取り直したものの、そう甘くはありませんでした。

荷物の重さもさることながら、兎自身も数年分齢を重ね、重量は増し、体力は反比例するように低下していたのでした。

体力作り(ダイエット)も頑張ろう、と誓った宮島での夜でした。