今回は、とても美味しい米粉100%のパンやスイーツを製造販売している片山美砂さんのご紹介です。片山さんは、福岡市南区の自宅のキッチンを本格的な厨房にリフォームし、毎日せっせと米粉100%のパンやスイーツを焼いています。近所ではもちろん、遠方からもたくさんの注文が入るほどの大人気。興味津々で訪問しました。

Q もともとパンがお好きなのでしょうか?

 はい!パンが大好きで、外の美味しいパン屋さんで買うだけでなく、自分でもいつも家族に焼いていました。
自分で焼くときは、国産小麦を使っていました。

Q 国産小麦のパンはもっちりして美味しく、安心・安全という印象がありますよね?

 そうですね。
ところが、夫が40歳過ぎて突然、小麦製品を食べた後に運動すると全身に蕁麻疹ができるようになってしまったのです。夫によれば、「いつも家で焼いてくれているような国産小麦のパンの方が、蕁麻疹がひどい気がする。」とのことでした。

同じ頃、私も原因不明の虚血性大腸炎となり、生まれて初めて下血し、それと同時に、今まで経験したことのない足の突っ張りを感じ、ついには、足の横の神経がバチっと音を立てて切れてしまいました。自分でひたすら調べた結果、小麦のグリアジンが腸を荒らし、リーキーガット(腸もれ)を起こし、それが神経に悪戯をする可能性を示唆する文献を見つけました。 では、なぜ外国産の小麦よりも国産小麦の方が症状が強いのか?考えた末、国産の美味しい小麦はパン用に品種改良されていて、グルテンが多いのではないか、と思い至りました。
そこで、とりあえず小麦製品を控える食生活に変えてみました。

Q 小麦製品を控え、どのような変化がありましたか?

 みるみるムクミがなくなり、体重も減り、体も軽くなっていきました。ただ、元々パンやうどん、スイーツも大好きだったので、小麦を控えるとなると日々の食事に困ってしまうのです。
パスタやうどんは玄米や米粉のものに置き換え、パンは米粉のパン屋さんを探して購入しました。スイーツは、米粉のものは数が少ないので、自分で作り、お友達やご近所に配っていたのですが、思いがけず米粉のチーズケーキが好評で、「何度ももらうのは申し訳ないから売って欲しい」と言われるようになりました。 

Q 以前、片山さんの米粉のチーズケーキをいただいたことがありますが、本当に美味しかったです!

 ありがとうございます!
私たちのように“グルテンフリー生活”をしている人もこうやって米粉商品を探しているのだろうなぁと思い、そんな人たちに美味しい米粉のスイーツを食べてほしいと思い、自宅のキッチンを改装し、菓子製造業の許可を取りました。
そして、コロナ禍から、米粉100%のパン作りも始め、販売化を目指すことにしました。

Q 米粉100%のパン作りには、小麦のパンとは違った苦労がありそうですが…

 はい。小麦のパンは大きな生地を切り分けて丸めてたくさん作れますが、米粉は最初と最後に丸めるパンの発酵具合が全然違うので、調整が難しいのです。
つまり、米粉100%のパンは、大量生産が困難です。
「あぁ、だから米粉パンに小麦混ぜたりグルテンや増粘材を添加したりしているんだ」、「だから米粉パンは高いのか」と初めて気づきました。小麦とは全く作り方が違いますし、歴史もまだ浅く、皆さん試行錯誤されている最中なのだと思います。 でも、様々な理由でグルテンフリーを実践している方々に、少しでも今まで食べていた物に近いものを食べてほしいと思い、飲食店の許可も取り、米粉100%のピザやホットドックなどを作って、テイクアウトでの販売を始めました。

まだまだ試行錯誤中ですが、いらっしゃったお客さまが、「米粉だけのパンを作るのは大変ですよね」ですとか、「2年振りにピザを食べられました!」など、労いや感謝の気持ちを伝えてくださり、その度に「あぁ、始めて良かった!」と思うのです。

Q 今、米粉100%の食パンをご馳走になっているのですが、とっても美味しく、見た目も触感も小麦のパンと変わらないですね!

 そうでしょう!!
私が外で見た米粉の食パンは薄く切ってあるものが多く、やっぱり米ですから小麦のような伸びがなく、プチッと切れますし、口に入れると餅のような食感になるものが多かったのです。ですから私には無理だと思っていましたが、お客さまのリクエストが多いのと、私自身もトーストと卵のモーニングをたまには食べたいと思っていたのもあり、チャレンジしてみることにしました。 何度も挫折しそうになりましたが、様々な工夫を重ね、私自身が「美味しい!」と納得できる食パンを作ることにようやく成功しました。

Q 片山さんの今後の目標・夢は何でしょう?

 まだまだ皆さんにお届けしたいグルテンフリーで安心して食べられる商品のアイデアのストックはたくさん!
そして、次なる私の野望は、グルテンフリーのカフェを作ることです。
グルテンフリー生活をしていると、やはりたまにはパンやパスタなどが食べたくなりますが、ご自分で作るのは限界があります。そこで、ランチや休日に、安心して美味しく食べていただけるメニューだけを提供するカフェを作りたいのです。
皆さんに喜んでいただきたいという気持ちを原動力に、私の無謀な挑戦は続きます!

取材を終えて

グルテンフリー生活をしている方々のために昼夜努力と工夫を続ける片山さん、これからも応援しています!福岡まで米粉100%のパンを買いに行くのは難しいと思いますが、インターネットでも注文可能です🔗ra natural sweets。いつか、東京でも販売してくれるといいですね。